無題

私の父は、日頃から子供たちに「愛してるよ」と言葉にしてくれるし、母に対しても「愛してる、世界一美人だね」などと毎日のように言葉をかけるような、優しい人だ。

でも、そんな父は感情の起伏が激しかった。

その日の機嫌によって、怒りの沸点は変わるし、暴力を奮っては来ないが、物にあたる人だ。おかげで実家の襖や壁には穴が空いている。

「嫌なことは嫌だとちゃんと伝えること」

そう教えられてきたから、嫌だと父に対して言ったらすごく怒られたこともあったし、機嫌の悪い父が怖くて怖くて、目が離せずにいたら「何見てるんだ」と怒鳴られたこともあった。

幼い頃から、そんな父の顔色を伺って生活してきた。するといつの間にか他人の顔色も伺うようになってしまって、嫌われることがすごく怖くなった。

子供の頃の経験が性格を確立すると言うが、まさにその通りだろう。現に私も、私の弟も人の顔色ばかり伺って、自分に自信が持てない。

それでも母のような「優しい人」にはなれた気がする。母のような、多少は自分を犠牲にして人の幸福を願うような、そんな優しい人には。

無題

私は以前付き合っていた人とは4年と少し、結構長い期間付き合いを続けていた。

元彼はしょっちゅう私に「ねぇ、俺のどこが好き?」と聞いてきた。私はこの質問をされる度、うんざりしていた。正直どこが好きだろうが何でもいいし、でも全部が好きという訳でもない。考えてみればどこが好きかも当時は分からなかった。元彼と政治的な話や、ニュースを見ての感想、セクシュアリティの話をすれば必ず揉めるし、彼と意見を言い合うのは疲れるから嫌いだった。

昨日の夜中、意識が遠くなる感覚を感じながら私はそんなことを思い出していた。そして気づいたのだ。私は彼のどこが好きだったのか。

それは「私のことを好きなところ」だった。ただそれだけだった。他に好きなところなんて、今思えばなかったのかもしれない。ただ彼に愛されているという事実が私は愛しくてたまらなかったのだ。

納得すると同時に、今度は私自身にうんざりした。私は自分が思っていた以上に卑しい女なのかもしれない。

無題

ブログをはじめた。

私は普段から手書きでノートに日記をつけているのだけど、やっぱり手軽さはこっちのが勝ってるな。

元々文字が書くのが好きという理由で日記をつけていたが、誰かに見てほしいという欲求がどうしても高まってしまった。

私自身、至って普通の、どこにでもいるような女子大生だ。毎学期、単位はギリギリだが卒業は出来そうだし、割と円滑に人間関係も良好な方だと思う。

正直な話、気に食わないような人間も周りにいるが、私ももう20歳だ。何食わない顔で上手いこと回している…つもりだが、どうも私はすぐ思ってることが顔に出るらしい。友人にもよく「そのうちアンタ刺されるよ」だとか、ちょっぴり嫌味っぽく言われてしまうことがある。

そんなところも愛嬌だと思って欲しいのだが。実際そんなに甘くはないらしい。

ただ、私はこれだけ分かりやすい人間なのだから、私が片思いしているあの人も、私の気持ちに気づいているのではないだろうか。気づいてもらわなきゃ困る。好きが溢れてどうしようもないのだ。

私は20年間生きてきたが、告白というものをしたことがない。それが今日(いや、厳密には昨日だが私にとっては寝るまでが"今日"だ)、彼に気持ちを告げると決意した。

好きだとは声にしたことがあるし、言われたことだってある。しかし、その後の進展は何もなし。距離が縮んだような気がしなくもない。そんな程度だ。

いつ告白するかは明言しないが、私にとって大きな一歩だ。これでもし結果がダメになっても、伝えない方が後悔する。後悔はしたくない。彼のことが本気の本気で好きだ。